アメリカのガンマガジンCOMBAT HANDGUNS誌が9mmピストルをテスト
法執行機関のサイドアームに最適なハンドガンとは?
軍事でも法執行機関でも、アメリカの公的機関のサイドアームは時代と共に見解が変わり、弾薬の種類や発射方式など常に手探りの状況が垣間見える。1980年代セミオートピストルと共に急速に広まった9x19mmパラベラム弾は装弾数の多さや反動の少なさによる命中度の高さから一般的な弾薬となった。しかし、アメリカ軍特殊部隊ではストッピングパワーの懸念から45口径を愛用する隊員も多く、法執行機関においても凶悪犯を射殺しきれなかった事案などにより.40S&Wに置き換えられるなど、不遇の時期も多いのが9mm弾だ。
しかし、ここ10年ほどは再び9mmが評価される風向きとなっている。現代の9mmホローポイント弾は1980年代に比べ格段に性能が上がっており、貫通力や弾速の面においても今や.40S&Wよりも9mmの方が優れていると言われている。FBIの弾薬テストによる再検討の結果、現在では9mmピストルが様々な警察機関で採用されるに至っている。
また、女性捜査官の増加などに伴い小柄な体格でも扱いやすい9mmオートは、結局のところ昔のように狙いやすさや装弾数の多さで評価を得ることとなった。
こうして再びハンドガンのスタンダードな地位を手に入れた9mmオートは、現在メジャーなガンメーカー各社から登場し、アメリカ軍や法執行機関などで採用され民間でも大きな人気を得ている。公的機関に多く採用されている9mm仕様のメジャーハンドガン達を、アメリカのガンマガジン「COMBAT HANDGUNS」誌がテストし、どのハンドガンがベストなのか評価し比較している。
テストモデル
COMBAT HANDGUNSのテストには以下の6モデルがチョイスされている。
●FN 509
●GLOCK17 Gen5
●H&K P30
●SIG SAUER P320
●S&W M&P9 M2.0
●WALTHER PPQ M2
いずれも世界各国の軍や法執行機関で採用された実績のある現代的な9mmポリマーフレームオートである。
ベスト・ハンドガンに選ばれたモデルとは?
COMBAT HANDGUNSのテストは3種のスピードターゲットシューティングを複数人の銃器ライターやシューターによって行い結果を導き出している。各テストはタクティカルリロードを含む内容となっており、ハンドガンの操作のしやすさも影響する。
評価ポイントは7つの項目ごとに15点満点で採点され、合計で最高105点のスコアを競う。
人間工学:グリップの握りやすさやリリースボタン・レバーの操作性、誤操作の少なさ
トリガーコントロール:ストローク量や重さ、スムースさ
リコイルコントロール:反動制御のしやすさ
サイト:サイトの見やすさ、狙いやすさ
オフハンド:利き手とは逆の手での命中精度
リロード:マガジンチェンジのしやすさ
FN 509 | GLOCK17 Gen5 |
H&K P30 |
SIG SAUER P320 |
S&W M&P9 M2.0 |
WALTHER PPQ M2 |
|
信頼性 | 9 | 15 | 14 | 9 | 15 | 15 |
人間工学 デザイン |
12 | 10 | 8 | 10 | 14 | 13 |
トリガー コントロール |
12 | 9 | 9 | 11 | 13 | 14 |
リコイル コントロール |
12 | 13 | 12 | 10 | 13 | 13 |
サイト | 13 | 14 | 12 | 7 | 12 | 14 |
オフハンド | 14 | 14 | 13 | 14 | 14 | 15 |
リロード | 8 | 8 | 5 | 11 | 14 | 14 |
合計 | 80 | 83 | 73 | 72 | 95 | 98 |
最も高い評価となったのは台湾警察などで採用されているワルサーPPQ M2で、P99開発で培ったワルサーの技術を法執行機関向けモデルとして反映した、まさにワルサーとしては狙い通りの評価となるものだ。次いで高得点となったS&W M&P9もMilitary & Policeという名の通り既に警察などでの採用実績あるハンドガンで、こちらも期待通りの結果と言えるだろう。
意外な低評価となってしまったのはSIG P320である。アメリカ軍にも制式採用され様々な法執行機関にも次々と採用されているにも関わらず最も低いスコアとなってしまったのだ。暴発事故の多発など課題も多いだけに、少々今後が懸念されてしまう。
詳細なテスト内容や評価内容は以下の記事で読むことができる。(英語)
PDW(Personal Defense World):Battle Royale:The Best 9mm Pistol Option for Modern Police Sidearms
これらは実銃におけるテストのためエアガンにはそこまで大きく関わる内容でないにしても、人間工学デザインやリロードのしやすさなどにはある程度通じるポイントはありそうだ。制式採用数の多さは決してピストルそのものの性能に直結するとは限らないという興味深い結果と言える。